作品の感想

「ピアノ・レッスン」の感想。悲しくも美しい音楽

2018年ー2019年のフィギュアスケートシーズン、坂本花織選手のフリープログラムに使われている曲が「ピアノ・レッスン」。

2018年の全日本選手権を制したことを覚えている方も多いでしょう。この曲が使われている映画が「ピアノ・レッスン」。90年代に、フランス、ニュージーランド、オーストラリアによる合作映画です。

言葉を発することができない主人公エイダ。スコットランドから結婚のためにニュージーランドに娘とともに向かいます。言葉を発することができないエイダが自らの声ともいえるピアノと共にニュージーランドに着きますが、結婚相手のステュアートはピアノを運ぶことを拒否し、彼女のピアノは海岸に置かれたままになります。そのピアノを巡る恋愛映画です。エイダの娘役を演じたアンナ・パキンは、この映画によってアカデミー助演女優賞を受賞します。さらにホリー・ハンターが主演女優賞を受賞し、当時は話題となりました。そして映画の中の音楽を担当しているのがマイケル・ナイマン。数々の英語音楽を担当しているマイケル・ナイマンですが、このピアノ・レッスンの音楽によって、一躍名前を知られるようになりました。マイケル・ナイマンによる美しい映画と、アカデミー脚本賞を受賞した脚本による流れるような、そしてメリハリのあるセリフ。映像を観ながらバックに流れる音楽、すさまじいまでの美しさです。

使われている言語は英語なのですが、基本的にイギリス英語です。エイダは言葉を発することができないという設定ですが、娘役のアンナ・パキンはなんとなくスコットランドなまりではないか?という英語を使っています。そして夫となるステュアートを演じているのはサム・ニール。彼は北アイルランドで生まれ、ニュージーランドで育った俳優なのですが、そのバックグラウンドによる、独特の英語もポイントです。

映像と音楽が見事にマッチしたこの映画は、フランス映画独特のくぐもったような映像と、出演者達の役柄上のバックグラウンドであるスコットランド、ニュージーランドの色彩がさらに映像と音楽の美しさを引き立たせています。当時までは、日本ではあまり注目されていなかったクラシックを感じさせる現代音楽ですが、マイケル・ナイマンによって日本でもこういった現代音楽に注目が集まり、それまでの日本における現代音楽が再評価されました。大きくマスコミなどに取り上げることはありませんでしたが、様々な意味で、今につながる日本の映画、映画音楽につながる流れを作ったとも言える映画です。