作品の感想

「空飛ぶタイヤ」の感想。

2018年の6月に公開された映画です。TOKIOの長瀬智也さんがトラック運送工場の社長である赤松を演じ、話題を呼びました。原作は、吉川英治文学新人賞を受賞した池井戸潤の「空飛ぶタイヤ」です。池井戸潤さんは、「下町ロケット」の作者でもあります。下町の中小企業がポリシーをもって大企業に挑む構図や世界観は、この映画の根底に流れています。

映画の冒頭は、何気ないキャッチボールのほのぼのとした場面に、リストラをしなければ会社経営が立ちゆかなくなるという不安がかぶさってきます。赤松社長の社員を思う苦悩が描かれた瞬間、タイヤが空を飛び、そこから怒濤のように、赤松に次から次に難題がふりかかってきます。タイヤは、赤松運送のトラックのタイヤでした。走行中にタイヤがはずれ、道を歩いていた主婦にぶつかり、主婦が亡くなってしまったのです。赤松は、厳しい取り調べを受けたり、遺族の強い哀しみを受け止めたりしてどんどん窮地におちいっていきます。父親から受け継ぎ、守りたかった会社も、事故を起こしたダメージから立ちゆかなくなっていきます。そんなどん底の彼を支えたのは、家族でした。赤松の息子は、人の命をうばった者の息子として、いじめのターゲットにされてしまいますが、妻の史絵は明るく対処し、赤松を支え続けます。夫に従順なだけでなく、赤松が「ビール」と言ったとき、さり気なく切り返す場面は、心がすかっとし、こんな奥さんがいたらがんばれるだろうなと、観客を明るい気持ちにさせてくれます。妻を演じる深田恭子さんの笑顔のチャーミングでキュートな美しさと、芯のしっかりしたしなやかさは必見です。

また、ディーン・フジオカさんや高橋一生さんなど主役級のイケメン男性俳優が彩り、映画を盛り上げていきます。身に覚えのない整備不良を疑われ、誇りを守るために徹底的に戦う赤松社長を、大企業を中から変えていこうとする内部告発や企業を支える銀行員の価値観、新聞記者の思いが交錯し、映画はクライマックスへと進んでいきます。大企業のリコール隠しという闇があぶりだされるまでには、痛みをともないますが、赤松社長はあきらめず果敢に取組み、赤松社長自身も自分が何を大切に会社を経営し、人とかかわり生きてきたのかを自分に問い続けることになるのです。
アイドルともいえる長瀬智也さんが、世間からバッシングを受けても、社員を愛し続け、自分の信念をもつ骨太の社長を素敵に演じておられます。