作品の感想

「紳士協定」の感想。ユダヤ人問題にメスを入れた衝撃作

ユダヤ人コミュニティよ呼ばれるアメリカのハリウッドが初めてユダヤ人問題にメスを入れた衝撃作だ。
主演は『アラバマ物語』でアカデミー主演男優賞を受賞したグレゴリー・ペックだ。監督は『エデンの東』や『波止場』を手掛けたエリア・カザンだ。

第20回アカデミー賞では作品賞を受賞し、エリア・カザンは監督賞を受賞している。他にセレステ・ホルムが助演女優賞を受賞している。ルポライターを演じたグレゴリー・ペックはアカデミー主演男優賞にノミネートされた。
映画の舞台はニューヨーク。ルポライターのフィル・グリーンは息子トミーと母親と3人ン暮らしだ。妻は既に他界している。フィルは雑誌編集長のミニフィからユダヤ人問題の記事を書くように依頼されるが、執筆は思うように進まない。だがある日、自分をユダヤ人であると名乗り、記事を執筆することに決める。やがてフィルはユダヤ人差別の根深さに直面していくことになる。

映画はとてもシンプルでわかりやすいストーリーで進んでいく。フィルが自分がユダヤ人であると名乗った際の周囲の人間の反応は明らかに冷たい。「ユダヤ人問題に関しては臭いものにはフタ」という者さえいる。また、ユダヤ人である女性秘書が自分が働く雑誌社に応募した際のことをフィルに語る。ユダヤ人の名前では採用されませんでしたと。自由を尊ぶと言っている自分が働く雑誌社が差別をしていたという実態が明らかになる。ユダヤ人と名乗った際の差別的な態度を見せるアパートの管理人や宿泊を拒否するホテルの支配人。映画は差別が日常生活の中にあることを見せつける。
差別はいけないことであるが、それを見ていながら、知っていながら何もしないことは悪である。映画は見る者にそれをストレートにぶつけてくる。

ユダヤ人コミュニティと呼ばれるハリウッドがその問題にメスを入れた衝撃的な作品だ。自らをユダヤ人と名乗ってユダヤ人問題に関する記事を書くことになったルポライターが直面する根深い差別を描き出していく。難解なストーリーではなく、ストレートに差別の実態を見せつけ、見る者に問い掛けてくる。差別に直面した時、どのように行動するべきなのか。見て見ぬふりをするのか、それとも敢然と立ち向かうのか。口だけではなく行動に示すべきであるのか。余計なものを全てそぎ落として、見る者に問い掛け、そして考えさせる。近年ではあまり見ることができなくなった映画である。日本での公開は1987年、アメリカでの公開から実に40年も後のことであった。